「オクシモロンは賢明な愚者の夢を見るか?」って話

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あ、作詞といえばオクシモロンですよね?(唐突)

ということで、日本語では「撞着語法」や「形容矛盾」と訳されるオクシモロン。この言葉自体は聞き馴染みがない方も多いと思いますが、実は身近なところに多くの言葉が転がっています。

作詞の技法としてうまく取り入れると面白い効果を生み出しますので、少し掘り下げてみましょう。

オクシモロン(撞着語法・形容矛盾)って何?

矛盾した言葉の組み合わせ

端的にいうと「一見、論理的に矛盾している言葉を含む表現」のことです。含蓄のある複雑な内容を短く簡潔に表したいとき、特に効果を発揮します。

よく聞く諺(ことわざ)もオクシモロン

身近な諺では「急がば回れ」や「負けるが勝ち」なんかが当てはまります。

諺以外にも「公然の秘密」や「小さな巨人」、記事タイトルにある「賢明な愚者」も代表的なオクシモロンです。

作品(作詞)での使用例

「悲しい幸せ」

GAOさんの『サヨナラ』でAメロに登場するフレーズです。「賢明な愚者」のような王道パターンの対比で、これに続く「遠くへ行くほど 君を思い出す」が、タイトルである『サヨナラ』に掛かってきます。

「サヨナラ/GAO」の歌詞 って「イイネ!」
「流れる季節に 君だけ足りない はぐれた心…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

『白い闇』

ROUAGEの『白い闇』も王道パターンですが、こちらは曲のタイトルです(ちなみに歌詞の中にオクシモロンはありません)。季節は冬の夜が舞台の楽曲ですが、「雪」に関する描写はほとんどないため、タイトルが意図するところの解釈は完全にリスナーに委ねられています。

「白い闇/ROUAGE」の歌詞 って「イイネ!」
「聖なる夜 静かな夜 誰よりも白く 面影さ…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

「ドブネズミみたいに美しくなりたい」

ザ・ブルーハーツの『リンダリンダ』で歌い出しの印象的なフレーズです。続く歌詞も「写真には写らない美しさ」と、「美しさの正体」を最後まで明言しないところにも想像力を掻き立てられます。

「リンダ リンダ/THE BLUE HEARTS」の歌詞 って「イイネ!」
「ドブネズミみたいに美しくなりたい 写真に…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

「本当の存在は 居なくなっても ここに居る」

BUMP OF CHICKENの楽曲supernova』のBメロのフレーズは、少々変形となっています。「本当の存在」という言葉に対し「居る・居なくなる」の両方が同居しているため、メロディが持つ「儚さ」の雰囲気を強く補う効果を持っています。

「supernova/BUMP OF CHICKEN」の歌詞 って「イイネ!」
「熱が出たりすると 気付くんだ 僕には体…」勇気をもらったり、泣けたり、癒されたり…、この歌詞をチェックしてみて!人の心を打つ「言葉」がぎっしり!

使用上の注意点

使い過ぎは厳禁

オクシモロンは「矛盾する言葉を一つにまとめる技法」のため、短い文の中に含みのある表現を内包することができます。その反面、連続して多用してしまうと表現の渋滞が起こり、結局何を言いたいのかが曖昧になって逆効果となります。

先ほど挙げた歌詞についても、作品中で使われているオクシモロンは紹介した例のみとなっています(なお『リンダリンダ』については計3箇所登場しますが、全て「ドブネズミ」がキーワードです)。

掛け離れすぎた言葉は効果が薄い

例えば「塩辛い砂糖」「青くて赤いカラス」のような表現は、確かに色々と矛盾はしていますが、単に「それだけ」なので、全くイメージが湧かず含蓄もありません。

作り方のコツ

単純に言葉に矛盾があれば良いのではなく「①語の直接対比(例:小さな巨人)」や「②直接の対義語に関するイメージの交換(例:黒い天使)」など、比較による矛盾を作ることがベターです。

例①「小さな巨人」は「巨人は“大きな人”である」ということの逆、例②「黒い天使」は「白い天使、黒い悪魔」のイメージをそのまま逆にしたものです。もし自分だけのオクシモロンを生み出そうとするのであれば、後者②のやり方で「対比する語とそれぞれのイメージ」を作ってから言葉を入れ替えると、割合スムーズかもしれません。

最後に一言。「塩辛い砂糖」ってそれ「ただの塩」じゃん。

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