マイナースケールはいくつも種類があって迷うよねって話

アイキャッチ:スケール メロディ・スケール
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マイナースケール(短音階)を勉強しようとすると必ず立ち塞がるのが「○○○・マイナースケール」という名前のいくつかのスケール。

「は? 何それ? 結局どれを使えばいいの?」となりますよね。私はなります

ということで、代表的な3つのマイナースケールについてまとめてみたいと思います。

※ここでは「Aマイナースケール」を基準に話を進めていきますので、ご了承ください。

3つのマイナースケールの構成音

ここでいう代表的な3つのマイナースケール、テキストで説明するとこんな感じです。

  1. ナチュラル・マイナースケール(エオリア音階、いわゆるラを主音とした白鍵の音階)
  2. ハーモニック・マイナースケール(和声的単音階、7音目のみを半音上げた音階)
  3. メロディック・マイナースケール(旋律的単音階、ハーモニック・マイナースケールに加えて6音目も半音上げた音階)

正直、文字だけで読むと「は?」だと思います。なので、譜面と音階で確認してみましょう。

簡単にまとめると、3つのマイナースケールは次のような関係になります。

  1. 「ナチュラル・マイナースケール」は、ピアノの白鍵(ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ)をそのまま弾いたスケール
  2. 「ハーモニック・マイナースケール」は、ナチュラル・マイナースケールから、7番目のソを半音上げた(ラ シ ド レ ミ ファ ソ# ラ)スケール
  3. 「メロディック・マイナースケール」は、ハーモニック・マイナースケールから、さらに6番目のファを半音上げた(ラ シ ド レ ミ ファ# ソ# ラ)スケール

なんで3種類もあるの?

なぜ3種類もマイナースケールがあるのかですが、それは単純に「どれも単体では不完全なスケールだから」となります。ここでは3つのマイナースケールの正体を少し掘り下げてみていきます。

「押しが弱い」ナチュラル・マイナースケール

ナチュラル・マイナースケールの構成音を前後半4音ずつ「ラ シ ド レ」と「ミ ファ ソ ラ」で分けると、このまとまりの音のうち、「ラ と ド」「ミ と ソ」の短三度の関係(より厳密にいえば前者)が「短調」と感じる正体になります。

「ナチュラル」と付くように、構成音としては一番無理のない自然なスケールです。ただしこのスケールの弱点は、7音目(ソ)と8音目(主音 ラ)との間が全音空いていて、「導音(ドミナント:解決する力)としての働きが弱い」ということです。

ドミナント・モーションについては別の記事でも書いているので、詳しくはこちらもご覧ください。

ドミナント・モーションと裏コードは別に怖くないよって話
コード進行の基本であるドミナント・モーション(V7→I)についての基本的な考え方と、それに付随する「裏コードとは何か」について解説します。

「歌いづらい」ハーモニック・マイナースケール

ナチュラル・マイナースケールは「導音(ドミナント:解決する力)としての働きが弱い」と書きました。この導音の問題を解決するために、7音目(ソ)を半音上げて(ソ#)「導音としての機能(「ソ# → ラ」に解決する力)を持たせた」のがハーモニック・マイナースケールです。

これで問題は解決……かと思いきや、今度は逆に6音目(ファ)と7音目(ソ#)の間が一音半空いてしまい、旋律を奏でるには少し不自然なスケールになってしまいました。

「メジャースケールになりたい」メロディック・マイナースケール

不自然なスケールであるハーモニック・マイナースケールの問題を解決するため、6音目(ファ)もさらに半音上げた(ファ#)ことで、スケール全体を見ると、全音と半音の間隔で構成されバランスの取れた音階になったのがメロディック・マイナースケールです。

すると今度は、4音目(レ)から8音目(主音 ラ)まで(レ ミ ファ# ソ# ラ)の間隔はメジャースケールと全く同じ「全全全半」に落ち着いてしまいました。

そもそもマイナースケールはどれも不完全

「不完全」だからこそ、使い方を工夫できる

まず前提として、メジャースケールは「まるで奇跡のように調和し完成されたスケール」であり、スケール上の音を追っていけば綺麗にまとまる「特別な存在」です。

それに対してマイナースケールは、「どの音階も不完全」なので、使い方に工夫が必要になってきます。逆に言えば、楽曲中のマイナースケールをパート・ブロックごとに切り替え使い分けることで、効果的に表現の幅を広げられるともいえます。

ワンポイントリリーフ、ピンポイントで使い分ける

例えば、Aメロなど「比較的抑揚を抑えたいブロック」では緊張感を抑えたナチュラル・マイナースケールを、Bメロやサビなど「ここぞ」という場面でドラマチックな展開(ドミナント・モーション)がほしいときはハーモニック(メロディック)・マイナースケールを用いる、というのがわかりやすい使い方だと思います。

もちろん「サビのブロックの中での使い分け」があってもいいと思いますし、一番聴かせたい「キメのワンポイント」でスケールが切り替わるととても効果的です。

じゃあ結局、何を使えばいいの?

ここまで読んでいただいた方には伝わったかと思いますが、単純に「このスケールだけ使えばOK」というものはありません。

普段の散歩程度でフォーマルな服を決め込む人はいないし、大事なパーティにカジュアルな服で行く人がいないのと同じです。要するに「使うべきところ」によって「使うスケール」は異なる、というのが結論です。

ただし、ドミナント・モーション(解決する力)という観点から見ると、「よりドラマチックに展開したいブロックではハーモニック(メロディック)・マイナースケールを用いるのが効果的」という結論になります。

最後に

「らん、らんらら らんらんらん♪」

スケールを変更してみた例として、映画『風の谷のナウシカ』の劇中歌として使用されている「ナウシカ・レクイエム(作曲:久石譲)」から最後の2小節を抜き出し、3つのスケールでそれぞれ演奏してみました。

メロディに合わせてコード進行もアレンジしていますので、3つのスケールの印象の違いを感じていただければと思います。

※オリジナルのメロディは1番目の「ナチュラル・マイナースケール」です。また、譜面をわかりやすくするため「Aマイナースケール」に移調しています。

ということで、今回は特にオチもなく終わります。

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